まほろばに神鹿を追って

Chasser le cerf de Dieu à Nara

破壊され尽くしたってかまわない。 何度でも何度でも生まれ変わるから。 ~奈良芸術短期大学日本画公開講座2022 シルクロード学⑭~

5月15日日曜日、
奈良芸術短期大学日本画公開講座2022
絵画を体験する 中央アジアの仏教壁画
「第1回キジル石窟
(中国新疆ウイグル自治区)
アフガニスタン(バーミヤーン)」
の講義を受けに行きました。

講師は、
奈良芸術短期大学日本画コース講師兼
京都市立芸術大学日本画研究室准教授の
正垣雅子先生。
正垣先生の公開講座『飛鳥で学ぶ』の
シリーズが私は以前から憧れで、
いつかは学びたいと願っていました。

今年の公開講座は実技ではなく講演で、
1回目はキジル石窟バーミヤーン
2回目はラダック仏教美術
3回目は敦煌莫高窟で、
いずれもシルクロードを愛する私には
絶対に聞き逃せない内容ばかり。


橿原神宮前駅を降り、
久米寺の門前を通り過ぎ、
てくてく歩いて10分弱、
奈良芸術短期大学へ着きました。

私、実は、10代後半、
この短大に進学したかったのです。
日本画か染色を学びたかったので。
諸事情から夢は叶いませんでしたが、
時を経てこうして縁が結ばれるのは、
万感胸に迫るものがありました。

小ぢんまりした可愛い学校で、
職員さんは皆さん親切で、
私を含めて13名の参加者は
ご年配の方が多く(私でも若輩)、
奈良大学のスクーリングを
思い出さずにいられませんでした。

やっぱり生の講義はいいな。
教室のスクリーンを目の前に、
しみじみとしました。



正垣先生の蔵書、『亀茲造像』。
キジル石窟の仏教壁画は、
なんとも言えず、可愛らしい。

キジル石窟がある庫車(クチャ)は、
古代シルクロード都市の亀茲(きじ)。
正垣先生は2010年、キジル石窟
壁画保存修復作業に携わられました。

キジルとはウイグル語で赤。
先生のスライドに映る
クチャの山は本当に赤かった。
鳩摩羅什が生きたころも、
山は赤かったに違いない。

明るく会話の弾む先生で、
詳細は講演の持ち出しになるので
控えますが、
ずばり実体験を踏まえた語りに
勝るものなし、です。

石窟で足場を組んで作業する際に
どこからともなく這い出てくる
でっかい蜘蛛に遭遇するのが厄介で、
「そいつに触れるとかぶれるので、
いかにそいつを巧くかわすか」等、
エピソードがどれも底抜けに面白く、
先生の話はいつまでも聞けそうで、
「私は話し出すと止まらないので」
とご本人も認められるほど。


バーミヤーンの渓谷を
筑波大学東京藝術大学
先生方が撮影された映像で
眺めているうち、
たまらなくなりました。

ああ、遠い昔のバクトリア
玄奘三蔵「おっしょさま」も
お訪ねになられた、
無数の壁画で彩られた仏教都市。

ああ、涙が出そう。
私が世界で一番行きたい場所。
ああ、私、バクトリア
空飛ぶ鳥だったかも、前世。

破壊され尽くしたってかまわない。
何度でも何度でも生まれ変わるから。

アフガニスタンの困窮を
どうか忘れないでいてほしい」
それが先生の願いでもありました。



上段は、クチャのムザルト河の
泥土の上澄みの粒子で作った顔彩。
下段の右端、
アフガニスタン原産のラピスラズリ
原料とするウルトラマリン。
キジル石窟の壁画には、
黄金より高価なウルトラマリンが
ふんだんに用いられていました。
日本の群青より、冷めた色です。
下段の左端2本は日本の顔彩の緑青、
孔雀石が原料で温かみのある色。
その右隣がアタカマイト、
キジル石窟の顔彩でこれも冷めた色。
シルクロードのオアシス都市の
渇いた気候に冷めた色は似つかわしい。


「講義後にも皆さんからこんなに
質疑応答で残っていただけて、
修復作業に興味を持っていただけて、
私も本当に嬉しいです。
定員30名なので、もっと広報さんに
頑張ってもらいたい」と先生、苦笑。

飛鳥で学ぶ中央アジアの仏教壁画。
すごいな、
100年前のシルクロード探検時代、
ドイツ探検隊のル・コックが
ひっぱがしたキジル壁画を
修復した先生の講義を聴けるなんて。

私は、
私の人生の王道を歩んでいる。
感に堪えなくなりました。