奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

雪の詩 Birds, by the Snow. ~宇陀松山城下町~

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日曜の朝、出向いたのは
大和高原南端の大宇陀市
桜井市から大宇陀市に入ったとたん、
山道は雪景色。
大宇陀温泉あきののゆも、この通り。


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あきののゆのお食事処は改装休業中。
道の駅「宇陀路大宇陀」のお食事処で
にゅうめんと柿の葉寿司を食べた後、
宇陀松山城下町を散策することに。
宇陀市松山地区「まちかどラボ」で
資料をたくさんもらい、散策スタート。


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まちづくり松山センター「千軒舎」。
もとは薬屋兼歯科医院、
明治時代前期建築、内藤家住宅。


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大宇陀の資料が展示されています。
堅繋格子戸がうつくしい。


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宇陀松山城についての映像資料、
奈良大学文学部文化財学科教授
千田嘉博先生が制作に携わっておられ。


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う、息子、でっか。
身長の伸び具合、主人に迫る勢い。


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小堀遠州が城割役を仰せつかった
宇陀松山城
城割とは、城を壊すの意。
なるほどね、築庭の草分けとして
土木のノウハウを駆使するわけだ。


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ここらは平野部なので雪は治まり、
ちらほら霰が降っています。


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宇陀市宇陀松山会館。
もと町役場で、明治後期の建物。
晴れたり吹雪いたり、
面妖な天候です。


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宇陀松山についての説明看板。


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宇陀松山城についての説明看板。


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ここでも千田先生の映像資料が
放映されていました。


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森野吉野葛本舗。
吉野葛の製造元の老舗ですが、
本邦の薬学の先駆けが本分。
morino-kuzu.com


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写っていませんが
道を挟んで向かい側には、
東大寺門前に支店のある黒川本家。
こちらが本店となります。
うちの息子の御用達の老舗です。


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森野旧薬園。日本最古の薬草園。
薬の町、大宇陀の脳のような場所。
店主さんに薬園の入場をお頼みしますと
「今日はおかしな天気なので、
足元にお気をつけてください」との言。
薬園、そんなデンジャラスなの?


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門をくぐり抜けると、
吉野葛を製造する撹拌層。
葛ももちろん、薬草です。


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あれ?
もしかして、山に登る?


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このアプローチまでが、
平地でございましたとさ。


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ううッ、道が雪で濡れて、
これは確かに気を張らないと!


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「パパ、ママ今日は遅いね」
「ママ山姥なんやけどな」
山靴なんか用意していないので、
スニーカーの野郎どもに
置いてけぼりを喰らい。


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ああ、でも、
なんてうつくしい雪景色。
阿騎野の里山が雪で薄化粧され、
その清澄さに感動しました。

雪深い北国の方々にしてみれば、
これしきの淡雪で浮かれる
奈良県民は噴飯物でしょうが。


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あの山は、音羽山でしょうか。
山の向こうは桜井市多武峰
意外と飛鳥からも近いのです。

阿騎野での狩猟は、野禽からの
妙薬の採取も意味しました。
身近な神仙郷だったのでしょう、
万葉びとにとって宇陀の地は。


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足元が滑って必死で登ったので、
薬草はこれしか撮影できませんでした。
実葛、整髪料の原料でしたので、
和歌ではイケメンの代名詞でもあり。


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筒咲きの白椿の大木。
花の少ない冬の季節、
椿は救いのように灯ります。


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誕生した季節でもあって、
私は冬を嫌いではありません。
ひとり静かに自らを省みる、
そんな冬の季節は寧ろ好きです。


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大宇陀の銘菓、きみごろも。
手提げ袋が真っ黄色で可愛い。
kimigoromo.com


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屋号のabcは
アーベーセーとフランス語で読む。
素朴でおしゃれな古民家カフェ。
ランチもご提供されているとは。
わー、ここ来れば良かったかな。
abc-uda.stores.jp



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あんまりにも素敵なカフェなので、
覗かせてもらいました。
シンプルでシックなお菓子の陳列。
パティスリーでもあるんですね。

フランスで修業された奥様お手製の
焼き菓子やピザやキッシュ。
私はデコレーションされたものより、
素焼きのお菓子が好きで、
心臓のど真ん中を射抜かれました。


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「地元の栗を餡にして作ったパイ、
いかがですか、お薦めです」とご亭主。
私はけっこう素直なので、
もちろん買わせていただきました。


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他にも、主人はフィナンシェを、
息子はフルーツパウンドケーキを、
私はクリームチーズブラウニーと
ハーブクッキーを買いました。

帰宅して食べたところ、どれも、
飛び上がるくらい美味しかった!
これは、是非ネットショップでも
買わせていただこうと思います。


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外装ももちろん、内装も
素敵なので撮影をご依頼しましたら、
「店の外からも写真撮ってくださって、
うれしいなぁと思って見てました。
どうぞお好きなだけ撮ってくださいね」
とご亭主から許可を得、撮る撮る。
素朴で粋というのは、
私の最も好む様式なのです。


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ご亭主、とても良い方でした。
次は必ずランチを食べますね。


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家族写真も撮っていただきました。
同じ奈良県内、
地元といえば地元ですが、
ちょっとした小旅行でもあり、
観光客気分。

私、5㎝ヒールの靴を履いています。
つまり、実質、息子のほうが背は高い。
想い出の写真になりました。
ありがとうございます。


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「今日は珍しく吹雪いて、
おかしな天気でした。
でも、楽しんで訪れていただいて、
とてもうれしい日でした。
また来てくださいね」とご亭主。

我々は嵐を呼ぶ家族かもしれない。
私の髪も吹雪で舞いあがっています。

奈良の東北部の山間の城下町に
小さいけれど上質なParisがある。
大宇陀を訪れる楽しみが
またひとつ増えました。


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大宇陀の酒蔵、久保本家酒造。
主人は「大和のどぶ」という銘柄の
辛口のにごり酒を買いました。
お店の方は商売っ気がまったくなく、
それが反って好感を持てました。
kubohonke.com


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なんだよ、その腑抜けた顔。

久保本家酒造さんの向かい、
十割蕎麦のお店「まほろば」があり、
蕎麦好きの私、震えあがりました。
mahorobamaru.wixsite.com


アーベーセーさんといい
まほろばさんといい、
これはもう、
近日再訪せざるを得ない。
大宇陀、待っててよ!


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帰り道、三輪山
山間にいたので平地は
「とつくに」の肌触り。


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私の視点が鈍っているから
のっぺり写ってしまう、
見慣れた箸墓。


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きみごろも。唯一無二のお菓子。
「あれ、こんな美味しかったっけ?」
と息子。
ほんとだ、昔より甘さ控えめかも。
伝統も日進月歩のようです。


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日曜の夜からずっと、雪の詩を、
紐解いて編んでいました。
おりこうさんですやすや眠っていた
赤ちゃんのころから見知っている、
心を尽くして一生懸命に歌う、
ただただ可愛い健気なひとが、
雪と一緒に舞って、行ってしまった。
それからずっと。


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雪がはげしく ふりつづける
雪の白さを こらえながら

欺きやすい 雪の白さ
誰もが信じる 雪の白さ
信じられている雪は せつない

どこに 純白な心など あろう
どこに 汚れぬ雪など あろう

雪がはげしく ふりつづける
うわべの白さで 輝きながら
うわべの白さを こらえながら

雪は 汚れぬものとして
いつまでも白いものとして
空の高みに生まれたのだ
その悲しみを どうふらそう

雪はひとたび ふりはじめると
あとからあとから ふりつづく
雪の汚れを かくすため

純白を 花びらのように かさねていって
あとからあとから かさねていって
雪の汚れを かくすため

雪がはげしく ふりつづける
雪はおのれを どうしたら
欺かないで生きられるだろう
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪ははげしく ふりつづける

雪の上に 雪が
その上から 雪が
たとえようのない 重さで
音もなく かさなっていく
かさねられていく
かさなってゆく かさねられてゆく

吉野弘
『雪の日に (合唱曲用)』


Water, is taught by thirst.
Land — by the Oceans passed.
Transport — by throe —
Peace — by its battles told —
Love, by Memorial Mold —
Birds, by the Snow.

Emily Dickinson
“Water, is taught by thirst.”


水は、渇きに教わる。
陸は――渡ってきた海に。
法悦は――苦しみに――
平和は――語り伝えられた戦いに――
愛は、追悼の銘に――
鳥は、雪に。

エミリ・ディキンソン
『水は、渇きに教わる。』


太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

三好達治『雪』