まほろばに神鹿を追って

Chasser le cerf de Dieu à Nara

1300年前から届いた手紙 ~第73回正倉院展~

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10月30日9時、
第73回正倉院展開幕。
8時30分に奈良国立博物館に到着。
もっと早くに来られている方も
いらっしゃるはず。
でも、1時間に500人の入場制限を
かけているので、混むことはない。
私はのんびりゆったり鹿に挨拶。
「おはようさん。ええ天気やな」


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たまたま停まった場所が
3列目の先頭だったので、
掲示板のモニターが頭上の目の前。
ラッキー!
開幕初日のしかも開始時間なんて
生まれて初めて利用するので、
へー、こんな感じなんだと新鮮。

奈良博のポーチには、
テレビ局や新聞社のプレスが
たくさんカメラを構えていて、
「おら、映るのいやや~」と
息子、私の背後に隠れる始末。


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杜家立成(とかりっせい)。
光明皇后の直筆です。
緻密にして剛毅な筆跡。
そして、これは私見ですが、
光明皇后かなりの勤勉家だったのでは。
そこらの「おひいさま」と一線を画す、
藤家の看板を一手に担う、実力者。
字は人なり。

今年の展示、「書く」を
サブメインテーマに据えていて、
筆や墨や硯などの文房具と
正倉院文書が多数陳列され、
当時は本当に紙が貴重品で
裏まで使用している様が
奈良大学通信の史料学概論で
学んだとおりで、感無量。

聖武天皇の遺品の小刀は
木簡を削るためのもの。
天平時代の消しゴムだね」と息子。
言い得て妙だね!
腰帯に下げて携帯した小刀、
字を書くことは
それだけ身近なことだったのです。

「書く」ということ、
筆跡というものは、
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
とも相通じますが、
人が生きて感じて考えぬいた証です。

正倉院宝物。
1300年前から届いた手紙です。


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白瑠璃碗、見たいな。
次はいつ展示されるのか。
サーサーン朝ペルシアの息吹。

今年の展示は
白瑠璃高杯(はくるりのたかつき)。
大仏開眼会にイスラーム僧が奉納した、
エジプトかシリア辺りで製作された
ローマングラスもしくは、
その流れを汲んで、なお、
意匠を洗練させたイスラームグラスかと。

白瑠璃高杯。
優雅にうっすらたわんで、
西アジアで錬られたものの気がします。


ガラスが
すきとほるのは
それがガラスの性質であつて
ガラスの働きではないが
性質がそのまゝ働きに成つてゐるのは
素晴らしいことだ

高見順『ガラス』


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五弦琵琶、いちばん見たい、
正倉院宝物のなかで。

これと雰囲気が似通う
螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)。
聖武天皇が慈しみ爪弾いた
四弦の円い琵琶。
会場には阮咸と尺八の楽曲が流れ、
これが聖武天皇を包んでいた音楽かと、
しみじみしました。

清籟蕭蕭。
雨や風や川の流れ、馬の嘶き。
ものさびしい。清らかで。

聖武天皇が奏でておられるようでした。


展示を見届けて階下を目指すと、
スロープの入り口から
「インタビューに答えていただけませんか」
と放送局の方に捕まりました。
息子と私、不意打ちにしどろもどろ。
私たちの前にも何人も通ったのに、
狙われていたみたいです。
私やっぱり悪目立ちするのか!?

「ママ、毎日放送って何チャンネル?」
「4チャンネル」
「おら、当分4チャンネル、視ない」
「ミーツー」
憮然と呟く息子に私も頷き、
ふらふらと奈良博を後にしました。


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奈良博の向かい側、氷室神社。
そういやお参りしたことない。
こちらの拝殿、
100円を機械にお供えしますと、
雅楽が流れるのです。
拝殿は無人なのに雅楽が流れ、
驚いてなんか調子が狂いました。

息子ともども氷神籤を引くも、
二人とも小吉。
雑念が多過ぎるんだわ、親子して。


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社務所で引いたおみくじを
氷にあてると字が浮かぶ。

「縁談はダメだって、
言いくるめられるから」と息子。
「ママは恋敵に注意やって!
鈴木亮平好きな人、いっぱいいるし、
前途多難やわ、ママ」
鈴木亮平って」

こんなんだから、小吉なのです。


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東大寺に息子が行きたがり、
大仏殿へ。
観光客が増えてきました。
この賑わい、いつまで続くか。


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柱の穴くぐり、できません。
小さい子どもたち、残念。
奈良県の子どもはみんな
この穴くぐりを体験するのです。
子どもの成長は目まぐるしい。
この2年でもう、
くぐれなくなる子もいるでしょう。
残念です。


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南大門を見上げて。
息子、いつの間にやら
私より東大寺が好きになって。
「なんかね、落ち着くの」と。

そうだね、観光客や
修学旅行生であふれても、
東大寺にはいつも風が吹き抜けるね、
爽やかに。


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帰路に着く際、
改めて奈良博を遠景と眺め。
切れ目なく続く予約観覧客の列。
この享楽が暫しでも持続することを
祈りました。


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今回の戦利品。
螺鈿紫檀阮咸マグネット。
マグネット付き紅茶缶。
マグネットセット。
どんだけマグネット好きやねん。
あと、正倉院展限定のハンカチ、
これが地味におすすめです。
私はお弁当箱を包みます。

常設のスーベニールショップで、
過去分の正倉院展の図録が
半額の500円で販売されていました。
ちょっとしたお得情報です。

今回、オンラインショップも
品揃えが豊富で、
来寧できない方もご一考を。
皆が楽しめる正倉院展でありますように。