奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

海は宝 たたかいの場 ~伊根浦から天橋立まで~

職場の大学院医学部の健診で、
軽度の胸椎側彎を指摘されました。
私は36歳で息子を出産するまで、
そこそこ痩せていました。
脊柱側彎症は細身の女の子が
最も罹りやすい疾患です。
私も10代で胸椎側弯に罹りましたが、
それは自然に治癒していました。

しかし、昨年、
コロナ禍でテレワークを始めてから、
胸椎側彎が再燃したのです。
テレワークはすぐ解消されましたが、
家にすっこんでいるあいだに
じりじりと背骨を害したのです。

今のところ外科手術は不要ですが、
成長期とは真反対のこれから、
症状の軽減は見込めないでしょう。

私は心身鈍感ですが、
こんな私にも平等に
コロナ禍の影は落ちるのです。


果たしていつまで生きられるのか。
40代半ば過ぎ、
こんなpandemicに支配され、
読まなくてもいい先行きまで
読まないわけにはいかない風潮に
圧し流されないほど私は強靭ではない。

すると主人が「日本海に行こうか」と。
一瞬、なんてアホな提案をするのか、
と呆れましたが、ふと思い直し。
「人がいない海、探そうか」と私。

変異型コロナは空気感染に近い、
即ち麻疹と同レベルの感染力を持つ。
空気感染を防ぐには換気、
原始的だけども窓を開ける、
それくらいしかできない。

人のいない、風通しの良い場所、
そこへ行こう。

直属の上司には
行き先を告げました。
「想い出作りに行ってきます」
「今生の別れみたいなこと
言わんといてよ瓊花さん」
「ワクチン打ったところで、
いつコロナに罹るかわからない、
いつ死ぬかわからないので」
「瓊花さん、いつ死ぬかなんか、
誰にもわからへんよ」
「それならせめて、
生きている実感がほしいですね」
私が准教授室の扉を閉じる寸前、
苦笑いで課題を投げられました。
「おみやげ、待ってるで」


人のいない、風通しの良い場所。

No man's land.

中立とか、中道とか、
マキアヴェリには胡乱な存在として
危険視されるだけでしょうが。


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で、伊根の舟屋に泊まることに。
一棟貸しの宿、空いていたので。


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奈良から京都の北、丹後半島まで
京都縦貫道を使って2時間半で到着。
奥吉野の川上村や十津川村と同距離。


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平日の早朝、誰もいない、
伊根浦伝統的建造物群保存地区


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伊根湾のそのまた小さな湾に面した
伊根町観光案内所。
背後、伊根小学校です。
最高の環境、おとなの目が行き届いて、
舟屋の景観と海が目の前。


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伊根小学校を見下ろすように、
伊根中学校。かわいい造り。
漁村の伊根、
おとなの職場である海から、
子どもたちを見守っているのです。
湾岸の狭隘な土地を有効利用する、
イタリアのアマルフィを思い出しました。


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海上タクシーに乗りました。
伊根湾一周、30分。


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日本のヴェネツィアと謳われる伊根。
海洋民族の魂の結晶のよう。
船に乗り込んだ段階で、
「海は最高の癒し系や」と得心。



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海猫にかっぱえびせんを投げますと、
見事にキャッチ。
これがもう、小躍りするほど、
面白い!
「ママ、ちょっと元気になったね」
と息子の言葉に主人が頷きました。


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舟屋の宿『蔵』さん。
とてもきれいにリノベーションされて、
人気の宿です。


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暖簾の奥、波の光きらめく。
ほんと、ヴェネツィアみたい。

私は20代のころ、
イタリア半島を1か月かけて
うろつきました。
ミラノ、コモ湖ベルガモトリノ
ヴェネツィアヴェローナジェノヴァ
パルマ、モデナ、フェラーラ
ラヴェンナボローニャフィレンツェ
ピサ、シエナ、サンジミニャーノ
アッシジ、ペルージア、ウルビーノ
サンマリノ共和国、ヴァティカン市国、
ローマ、ポンペイナポリ、ソレント、
カプリ島、イスキア島、アマルフィ
思い出せない地名もあり。

シチリア島サルデーニャ島
Magna Graecia(マグナグラエキア)を
攻められなかったのは後学と見做し。

イタリアのすべてを
知ったわけではありませんが、
それでも敢えて最愛の地を選ぶなら、
それはヴェネツィア一択です。

伊根は、
地形はヴェネツィア本土に、
内実はその群島のリド島に似ています。
リドは、ミラノ公爵家の傍流
ルキノ・ヴィスコンティが監督した
映画『ベニスに死す』の舞台です。


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さっき乗った海上タクシー
船頭さんが、蔵さんのお父さんで、
偶然の乗船でした。
伊根愛にあふれる船頭さんでした。


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素朴な舟屋に泊まろうしたのですが、
空いていませんでした。
蔵さんも、キャンセル空きで
たまたま泊まれたのです。


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昔はここ1階は海で、船を舫いました。
昔の船は木造、雨ざらしでは傷みます。
だから舟屋が必要なのです。


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2階。オシャンティな和室。
舟屋は文字通り船置き場、船の家で、
人は道を挟んだ向こうの母屋に住みます。


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開放的で快適なお風呂。
一棟貸し、初めて。
病みつきになりそう。


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2階のベランダ。
伊根湾の内海。
海上タクシー遊覧の海図。


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伊根湾の外海。
右手の青島には、
悲しくも優しい民話が伝わります。


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旅館に置かれていた
伊根浦舟屋群等保存会が製作した絵本
『子どもたちにおくる
「伊根浦ものがたり」
鯨も北前船もやってきた』。

たいへん良く編まれた読み物で、
狭いこの伊根の土地が、
古代は山手に文化を築いていた等々、
丁寧に歴史と民話を紹介されています。


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なかでも、
伊根湾の地形を活かした鯨の追込漁が、
いかに村総出の一大事業か、
目を瞠りました。
そして、鯨の母子の悲しい物語。
私はこういう話に滅法弱い。
「『スーホの白い馬』みたいな話、
ママ絶対に泣くね」と息子。


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青島には、
鯨の供養塚が3つ築かれています。
2つは母鯨とそのそばを離れなかった
子鯨のもの、では3つ目は?

その答えはもう1冊の本、
『舟屋むかしいま 
丹後・伊根浦の漁業小史』に。
母鯨のおなかには胎児がいたのです。
伊根の村人は、
生活のために母鯨は食べましたが、
子鯨はそのまま埋めてあげたのです。
どこの漁師さんもそうでしょうが、
伊根もきちんと
施餓鬼供養をされています。

いややわ、
言い伝えを知ってから青島を見たら、
涙が止まらへん。

命をいただいているのです。


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筆者の和久田幹夫氏の巻頭言、
「海は宝 たたかいの場」。
ああこれが知りたかった、
聞きたかった、
この生きた海の人々の声が。


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コロナ対策もあり、
食事は宿ではなく
提携先のお食事処で摂ります。
ここは『地魚料理よしむら』さん。
穴場!


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先付は、
へしこと烏賊の煮付と小鯵の南蛮漬け。
私の南蛮漬はサンキュウ(白鯖河豚)。


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鯛にヒラメにヒラマサ等々、
8種類の刺身は種類が多過ぎて、
名前が覚えられませんでした。

あったりまえですが、
さっきまで生きて泳いでいた魚、
美味しいこと!

どう言えばいいのか、
澄んだ香りがするのです、
魚なのに魚臭くなくて。


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海の王様、イシダイの煮付。
漁師のご亭主が獲ってきたばかりの
新鮮なイシダイ、
海がきれいなので澄んだ香りがします。
煮付、絶品でした!


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岩牡蠣
これも香りが澄んでいます。
夏の旬の牡蠣、一口!


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鯛と太刀魚。
どんどん出てくる魚料理。
ここらへんから満腹ゆえ、
わけがわからなくなりました。


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鰆、息子が貪り喰らい。
「ふわふわなんだよ」と。
魚好きの主人も
「これは大正解、大成功」と唸る。


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もう食べられない!
でも、最後に小鯵やサンキュウの
揚げ物がどっさり!
サービスで、てんこ盛り!

こちらも実は旅館です。
舟屋でないので
出遅れてしまったと。
でももともと魚料理が売りなので、
味は伊根で一番! とご亭主。

ご亭主、
私たち家族が気に入られたのか、
食事が終わったら宿まで
車で送ってくださいました。

次はここに泊まろうかな。
1日1組の貸し切りで、
展望風呂があるそうです。
食事は、言うまでもない。


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朝食は、前日に買っておいたもの。
昨夜に魚料理を食べ尽くしたので、
軽めの朝食でちょうどいい。


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海際のデッキ。
早朝の汐風が冷たくて気持ちいい。


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伊根の海、透きとおっています。
問答無用で泳ぎたくなる。


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「おらの海って感じ」
わかるわ~。
湾って、包まれる海だもの。


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来たときよりも美しく。
立つ鳥跡を濁さず。
それが我が家の旅のmottoです。


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海に一番近い酒蔵、
向井酒造さんへ。
海に面した酒屋さんです。


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お目当ては、
女性杜氏が醸される
古代赤米のお酒『伊根満開』。


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時が止まったような。
静かな静かな漁村。
すっかり好きになってしまいました。

名残惜しい。
ちいさな海の都。


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次の目的地までの途中、
浦島神社へ寄りました。


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この丹後半島の伊根は、
徐福や浦島子伝説など、
外つ国の文化の懸け橋である
「海の英雄」の舞台です。

網野銚子山古墳や赤坂今井墳墓や
神明山古墳など、
遺跡からの出土品も素晴らしく、
古代丹後王国の誉です。


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北前船の模型。
私の亡き父は富山の出身。
敷地に小川が流れる豪農でしたが、
末っ子の父には関係ありません。
なんにせよ、日本海沿岸は、
北前船の恩恵を多大に受けています。


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浦島神社の境内は
本庄小学校とつながっています。
子どもたち、
伝説と直結しているのですね。
それにしても伊根の学校、
どれも建物が瀟洒です。


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網野町の夕日が裏海岸。
今年の夕陽は赤く、
海を銀色に染めました。
定宿もキャンセルが多く、
海もほぼ貸し切りでした。


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伊根満開、世界一予約の取りづらい
デンマークコペンハーゲン
気鋭のレストラン「noma」に
採用された数少ない日本酒です。
採用理由は、日本の古代米の赤米を
醸したその「日本らしさ」だとか。
でも高価でなく気取らない、
魚によく合う、優しいお酒です。

このうっすら赤い日本酒は、
八月生まれの主人に。
いつもありがとう。
私と息子を大切にしてくれて。
私が人生で出逢った人たちの中で、
あなたは最も善き人です。

こら息子!
お酒、飲んだらアカン!
「ママに似て、きっと、
おらもお酒飲めないよ。
だから香りだけ嗅がせて」
香りで酔うことはないけど、
でも、気持ちは酔うで~
私も息子を真似て、
古代米の赤いお酒の香りを聞きました。
優しく穏やかな、伊根の海の香り。


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夕食も、翌日の朝食も、部屋出し。
大浴場も入れ替え制。
ほぼ誰にも会わない。


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朝6時、誰もいない海。
主人と息子は
朝食前に泳ぎに行くそうな。
うちは全員、早寝早起きです。


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どこの国の工作員やねん。
古代、こういった身体能力の高い者が
海を越えて日本列島まで辿り着いた。


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イトマンスイミングスクール
6歳で放り込まれた息子、
8歳で4泳法をマスター。
「泳ぎを覚えさせてくれたことは
ママに感謝してる」との言。

私、昨日海で泳いだら、
立ち泳ぎも平泳ぎもヤバかった。
バタフライ以外は泳げたのに!
イトマン、行こうかな。


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工作員父子、6時から8時まで、
朝の海を借り切って泳ぎ尽くし。
「今年、海に来れて、良かった」
そだね、一瞬一瞬が、宝物だね。


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定宿の最寄のアイスクリームショップ
「酪ママ工房RoyalMerry」さん。
以前から気になっていましたが、
巣蜜ソフトクリームなんて
とんでもなく美味しそうなメニュが増え、
訪ねてみたところ、お休み。

しかし、旅館の売店で買えたので
試しましたら、これがもう、
私が今まで食べてきたアイスの
トップ3に入る美味しさ!
平群mammaのピスタチオジェラート
普通検索観音さんツツコワケさんと
食べたならまちKaramellのアイス、
そして、これ。

主人も息子も飛び上がっていました。
「ゲッキうま!」
2日連続でアイスを購入しました。


www.rakumamakobo.com


通販もOKみたいです。
嬉しい発見でした。


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夏も早朝(つとめて)。
天橋立ビューランド。
高所恐怖症の私には至る所、地雷。


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またのぞき。
誰もいない。
朝早く動くと、得ですね。


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日本三文殊、天橋山智恩寺
先日は安倍文珠院へお参りしたので、
残るは山形県の亀岡文珠だけ。
関西からの訪問、まだまだ難しい。


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お守りメダル。
銀色がしぶい。


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扇子おみくじ。
松によく似合う。


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知恵の輪。
海の民のためのお守り。

江戸時代、航海の安全のために建てられました。久世の渡を守ってきた石燈籠を文殊菩薩の慈悲の光と感じ、地元の人々から智恵の輪燈籠と呼ばれるようになったとされています。
智恩寺のHPより



blog.goo.ne.jp
Candyさん、息子さんの分も、
奈良と京都の文珠さまに
お祈りしてきました。


苦難を避けず直進せよ。


僭越ながら宮沢賢治の言葉を贈ります。

そう、私自身へも。