奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

君 我が凶慝を瞰たまはば 我を撃つこと神鬼の如くしたまへ

奈良大学のHPから2021年度版の
サブテキストとスクーリングガイドを
PDFでダウンロードしました。
へー、神話伝承論、上野先生が
名誉教授として継続されるんだ、
ちょっと驚き。

ミスター奈良大学とも呼べる
上野誠教授が退官されたこと、
ご存じの方も多いでしょう。
私は上野先生の講演を
直に傾聴したことがあるので、
もしかして神話伝承論の
スクーリングの実地開催が無理でも、
「詮方なし」と思える向きもあり。

スクーリング、そんなに
現地開催を望んでいないのです、
もはや。
ZoomやTeamsでいいです、もう。
だって、会議アプリ、面白いもん。

ただ、オンライン学習ばかり
進化させると、どうしても
取り残される方々が生まれる。

私は冷淡なので、
自分自身で開拓して
食らいつくべき学業、
そのツールを操作できないのなら
身を退いて然るべきと思っています。

しかし、反面、
コロナのワクチン接種に関しては、
どうしてネットで早い者勝ちみたいな
甚だ公平性を欠く、
弱者をいたぶる方法が取られたのか、
はらわたが煮えくり返る思いです。


知人と話していたのです。
その方のお父様は社会的地位が高く、
苦労人であって見識もご立派です。
しかし、そのお父様、ご友人に電話で、
ご自身がネットでワクチン接種を
勝ち取ったと誇らしげに公表された途端、
「コンサートやスポーツなど
娯楽面でのネット抽選の当選は、
いくらでもあなたの勝運と
見なされてよろしいでしょう。
しかし、この命に関わる件に関して、
あなたがIT弱者を出し抜く言いぐさは、
あなたのこれまでの功績を、
あなた自身の人間の尊厳を、
一瞬で、済し崩すものです。
どうか恥を知っていただきたい。
あなたを友として、忠告します」
と厳しく戒められたそうです。


「お父様、良いご友人をお持ちで、
お幸せですね」
私は知人にそう答えました。
「瓊花さん、私も父にそう言いました。
父も『本当に恥ずかしい。耄碌したよ』
と反省していました」
知人は私にそう返されました。


憲法記念日に私が紐解く漢詩
人としての当たり前の姿を謳う。
菅公、私はあなたの顰に倣いたい。


哭奥州藤使君 奥州藤使君を哭す
〈九月廿二日、四十韻〉

家書告君喪  家書 君が喪を告ぐ
約略寄行李  約略 行李に寄す
病源不可医  病源 医すべからずして
被人厭魅死  人に厭魅せられて死せりと
曾経共侍中  曾経 共に侍中たりき
了知心表裏  了知せり 心の表裏
雖有過直失  過直の失 有りと雖
矯曲孰相比  曲を矯むること 孰か相比べん
東涯第一州  東涯の第一の州に
分憂為刺史  憂ひを分かちて刺史と為なりぬ
盈口含氷雪  口を盈たすに 氷雪を含み
繞身帯弦矢  身を繞らすに 弦矢を帯びたり
僚属銅臭多  僚属 銅臭多く
鑠人煎骨髄  人を鑠りて 骨髄を煎りぬ
土風絶布悪  土風 布悪を絶てば
殷勤責細美  殷勤に 細美を責む
兼金又重裘  兼金 又 重裘
鷹馬相共市  鷹馬 相共に市む
市得於何処  市め得たること 何の処に於てか
多是出辺鄙  多くは是れ 辺鄙に出づ
辺鄙最獷俗  辺鄙 最も獷俗にして
為性皆狼子  為性 皆狼子なり
価直甚蚩眩  価直 甚だ蚩眩すれども
弊衣朱与紫  弊衣 朱と紫とあり
分寸背平商  分寸 平商に背かば
野心勃然起  野心 勃然として起つ
自古夷民変  古より夷民の変はること
交関成不軌  交関成れども軌あらず
邂遘当無事  邂遘すれば 無事なるべく
兼贏如意指  兼贏すれば 意指あるが如し
惣領走京都  惣領 京都に走き
豫前顔色喜  豫め前め 顔色喜ぶ
便是買官者  便ち是れ 官を買ひし者
秩不知年幾  秩は年幾ばくなるかを知らず
有司記暦注  有司は暦に記し注し
細書三四紙  細書すること三四紙
帰来連座席  帰り来たらば座席に連なり
公堂偸眼視  公堂に偸眼して視る
欲酬他日費  他日の費えに酬いんと欲し
求利失綱紀  利を求めて綱紀を失ふ
官長有剛腸  官長 剛腸有らば
不能不切歯  切歯せざること能はざらん
定応明糾察  定めて糾察を明らかにし
屈彼無廉恥  彼の廉恥無きを屈すべし
盗人憎主人  盗人は主人を憎み
致死識所以  死を致して所以を識しる
精霊入冥漠  精霊 冥漠に入り
不由見容止  容止を見るに由あらず
骸骨作灰塵  骸骨 灰塵と作り
無処伝音旨  音旨を伝ふるに処無し
葬来十五旬  葬られしよりこのかた 十五旬
程去三千里  程は去ること 三千里
廻環多日月  廻環す 多くの日月
重複幾山水  重複す 幾ばくの山水ぞ
憶昔相別離  昔 相別離せしときを憶へど
寧知独傷毀  寧ぞぞ知らんや 独り傷毀らるるとは
君間泉壌入  君は間に泉壌に入りたまへど
我劇泥沙委  我は劇しくして泥沙に委てられにたり
天西与地下  天の西と地の下と
随聞為哭始  聞くに随ひて為に哭し始む
哭罷想平生  哭すること罷みて平生を想ふに
一言遺在耳  一言 遺りて耳に在り
曰吾被陰徳  曰く「吾 陰徳を被むれり
死生将報爾  死すとも生くとも 爾に報いんとす」と
惟魂而有霊  惟れ魂にして霊有らば
莫忘旧知己  旧の知己を忘るること莫かれ
唯要持本性  唯 要むるは 本性を持し
終無所傾倚  終に傾倚する所無からんことのみ
君瞰我凶慝  君 我が凶慝を瞰たまはば
撃我如神鬼  我を撃つこと神鬼の如くしたまへ
君察我無辜  君 我が無辜を察りたまはば
為我請冥理  我が為に冥理を請こひたまへ
冥理遂無決  冥理 遂に決すること無くんば
自茲長已矣  茲より長へに已みなん
言之涙千行  言はば 涙千行す
生路今如此  生路 今此くの如し
聞之腸九転  聞けば 腸九転す
幽途復何似  幽途 復た何似
拙詞四百言  拙詞 四百言
以代使君誄  以て使君が誄に代へん


陸奥守藤原滋実殿の死を歎く
〈(延喜元年)九月廿二日、四十韻〉

家族からの手紙が君の死を伝えてきた
概要を書いた手紙を使者に託して
病の原因を治す事もできず
人に呪われて死んだと手紙には書いてあった
私達は以前 共に蔵人だった
お互い心の表と裏を良く分かっていた
性格が実直すぎるという欠点が君にはあったが
非道を正すことについて誰も比べようがなかった
君は東の果ての第一の国である陸奥
民衆と憂いを分け合って国司となった
口を満たすために氷と雪を含み
身にまとうために弓弦と矢を身につけた
だが部下には金で官職を買った輩が多く
人を中傷して心の底まで痛めつける
土地柄粗悪な麻布もないので
彼らは執拗に細々とした立派な物を要求する
そうして取り立てたのは良質な金そして皮衣
加えて鷹と馬を一緒に手に入れる
これらはどこで手に入るのか
そのほとんどは辺境で産出するもの
だが辺境の風俗は最も粗暴で
民衆の本質は皆狼の子のように荒々しい
価値ある品物を売る際は
すこぶる相手を愚弄して騙すが
ぼろぼろの服を着た人間には善人も悪人もいる
だがほんのわずかでも普段の商いに背けば
荒々しい心が突然生じる
昔から蝦夷の民がすぐ態度を変えるのは
我々と取り引きこそしても守るべき規則がないからだ
偶然出会ったのだから何事もあってはならない
しかし倍の利益を得るので考えるところがあるようだ
任期満了が近づくと執事が都に赴き
事前に進み出て品物を贈ると相手の顔がほころぶ
つまりこれが金で官職を買った人物
受け取る側は地方官の任期が何年間か知らない
しかし官吏は地方官の任期満了の時期を暦に書き付け
書き切れない分は紙三四枚に細々と記す
贈った人間が都に帰ってくれば座席に列し
役所では人目を盗んで贈った相手に視線を送る
贈られた側は過去の出費に応えようとして
利益を求めて法規を忘れ果てる
長官に意思の強い人物がいれば
その様子に歯ぎしりせずにおられようか
きっと監督する立場から取り調べて罪を明らかにし
あの恥知らずを押さえ付けるはずだ
すると泥棒は主人を逆恨みし
主人は殺されてようやく原因を理解する
君の霊魂は暗闇の世界に入り
立ち居振る舞いを見る術もない
君の身体は灰と土ぼこりになり
私の言葉を伝える先もない
葬られてから訃報が届くまで百五十日
君のいた多賀城との距離は離れること三千里
数多の月日がめぐり
どれほど多くの山川に隔てられているのだろう
昔別れた時のことを回想しても
君が独り殺されるとはどうして分かっただろう
君は安らかに黄泉の世界に入ったが
私はせわしく泥と砂に捨てられたままだ
私のいる天の西と君のいる地の下と
訃報を聞いた途端に泣き出した
泣き止んで昔を回想すると
君のある言葉が耳朶に残っている
「私はあなたの人知れぬ恩徳を受けています
死んでしまっても生きていても
あなたに恩返しをしようと思っています」
君の魂に霊が宿るなら
私という旧知の人間を忘れないで欲しい
ただ君に求めるのは
私が生来の性質を堅持し
最後まで寄り掛かることのないように
ということだけだ
君よ 私が道理に背いたと御覧になるのなら
死霊のように私を殺して欲しい
君よ 私の無実を御存知なら
私のために天へ深遠なる真理を求めて欲しい
深遠なる真理も結局定まらないのであれば
今後は永遠にどうにもならない
もう真実を訴える術はない
君に向かってそう告げると涙がとめどなく流れる
私の人生は今やこの有様
だが君の死を聞くと 
腸が九回ねじれるほどの苦しみを覚える
あの世への道はどのようなものなのか
拙い詩四百字
もって陸奥守殿への追悼文に代えよう


菅家後集』486
※山陰亭様のHPを参照いたしました。


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