奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

流れ星か、見たことないな。 ~シルクロード学⑫~

私の涙は1円の価値もない。
いや、1銭もないかもしれない。
すぐ泣くのです、感動すると。
しかし、悲しみ苦しみで泣くことはない。
魂を射貫く悲しみ苦しみなら、話は別。

で、最近、
私が初めて知ったアフガニスタン
沢木耕太郎さんの『深夜特急第2便
ペルシャの風』と思い出し、
沢木さんの著作を再訪してみました。
私は3歳のころから濫読家ですが、
成人してから滅多なことで
本を買わなくなったので
(識者ぶって蔵書量を誇るなんて
お粗末な裸を見せびらかす
精神の露出狂としか思えなくなり)、
もちろん図書館を利用してのこと。

図書館の本は、みんなのもの。
つまり、誰のものでもない。
所有の頸木から放たれた存在は
太古の巫女のように、
とても自由で清潔に思えるのです。
私にとって、自由と清潔は同義です。


深夜特急』で知った素敵な英文、
”Breeze is nice"は今も口ずさむ。
日本語に飢えた旅人たちが
手持ちの本を交換する、
シルクロードを東西で行き交う和書。
『一瞬の夏』のカシアス内藤と沢木さん、
なつかしい、まぶしい、10代の読後感。
ふと、未読の本を見つけ。

『流星ひとつ』は、
歌手藤圭子と作家沢木耕太郎
鉤括弧だけのインタビュー本。
藤圭子さんは、その壮絶な最期が
どうしても看過できず、
敢えて意識外においた存在。
「旅も人生も深めるなら一人がいい」
と仰る沢木さんの語りなら、大丈夫かも。


水晶のように硬質で透明な精神。

美しかった「容姿」だけではなかった。「心」のこのようなまっすぐな人を私は知らない。

透明な烈しさが潔癖に匂っていた。


沢木さんの目に映った藤圭子さんの姿。
同志のような男から、
こんな静かに煌めく三日月めいた言葉を
胸に突き刺されたら、
女はもう今生に
思い残すことはなくなるかもしれない。


流れ星か、見たことないな。

子供時代、何も見てなかったのかもね。

故郷なんてもう何処にもないんだよ。


藤圭子さんの言葉に、
私は声を殺して泣きました。
私も子どもの頃の記憶が曖昧で、
薄情者だと旧知によく謗られたので。
私は藤圭子さんとは逆に、
流れ星しか見ようとしなかった、
それもまたいびつな子どもだったのだと。


シルクロードのオアシス都市で
沢木さんと肩を並べて
柘榴と葡萄を食べる藤圭子さんは、
まったく有り得ない姿ではない。
身一つで世間を渡れる歌手なのだから、
世界中どこでも歌えたはず。
どんなに美しかっただろう、
葡萄棚の下で歌う彼女は。
その万感籠めた歌声は、
洋の東西の十字路を駆け抜けたはず。


間違った恋をしたけど
間違いではなかった
宇多田ヒカル『Be My Last』


恋をいろいろな言葉に変えてみれば
流れ星が見えてきそうな気がします。

母の流れ星は
「光る」の名を与えられた
娘だったのではないでしょうか。


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お雛様フラワーアレンジメントの
キット3点。
ならリビングで紹介されていて、
1点にしぼれなくて全部購入しました。


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西靖子先生の作。
初めて購入しました。
明快な作品で、30分で作れました。
とても目を引く存在感です。


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同じく河西先生の作。
2点購入したので花材を少し多めに
おまけしてくださいました。
ちょっと手が込んでいるので
1時間かかりました。
仕上がり、大満足。


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私のお師匠様、田中雅美先生の作。
先生らしい、可愛らしさとシックさ。
こちらも30分で作れました。

お雛様のルーツは漢の時代の中国。
崑崙山の西王母蟠桃からも知れて、
魔除けの桃はシルクロードから
ペルシア経由で欧州まで伝わりました。
日本はもちろん、
纏向遺跡の桃の種が有名です。

桃の実の香り、極楽の香り。
川上弘美さんのエッセイで、
戴き物の桃があまりにも良い香りで
段ボール箱を抱えてうっとりすると、
気づいたら朝から晩まで
うっとりし続けてしまったという、
身につまされるお話があります。
時間を忘れさせる香りです、桃の実は。

女の子のお祭りは、
穢れを祓い浄めるお祭りです。
残念ですが、
当初は女の子そのものが
犠牲の依代として屠られたようです。
しかし、どうでもいい存在を
供御として「絶対」へは捧げられない。

私は奪われる側の声に
いつも聞き耳を立てている。
真実を、奪う側は持ち得ないから。

流された依代を追いかけて、
当然、私は川から海へ到る。

万物の起源、生命の母胎、海へ。


てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った
安西冬衛『春』