奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

あなたは単なる将軍。私は国王になる身だ。 ~西洋史特殊講義②~

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好きな映画監督はふたり。
ひとりは、私の精神の母となった
ルキノ・ヴィスコンティ
死ぬときは、『夏の嵐』を観ながら、
そう勝手に決めています。
19世紀ヴェネツィアに降りしきる
イタリア独立の紙吹雪。

私はイタリアは、
北はコモ湖ベルガモから
南はカプリ島アマルフィまで、
半島の長靴の踵部分と
サルデーニャ島シチリア島以外は
ほぼ足を運びましたが、
なんといってもヴェネツィアが一番でした。
まさに世界一の舞台。
それもこれも『夏の嵐』がゆえ。


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もうひとり、
私の精神の父となった
デヴィッド・リーン
『逢びき』『旅情』『戦場にかける橋』
アラビアのロレンス
ドクトル・ジバゴ
『ライアンの娘』、はずれなし。

とくに『アラビアのロレンス』は
10代のころ、週一で観ていました。
severeかつwitに富んだ台詞に
のぼせていたのです。

イギリスの三枚舌外交。
アラブとユダヤへ不義理を尽くし。
よくもよくもこんな真似。
イギリスのしでかしたことは
千年単位で後を引くはず。

映画の主人公のロレンスは、
ピーター・オトゥール
怖いくらい青い目と
金属質に強ばった金髪が
「清潔」な沙漠で異彩を放ち、
羅針盤を求める船のような男だと、
ただただ不気味に思えたものです。

探検家と冒険家の違いは、
前者が目標を持って行動するのに対し、
後者は行動そのものが目標ということ、
それではないでしょうか。


名言だらけのこの映画の中で
私が最も感銘を受けた言葉は、
ロレンスを見限った
正統カリフ家の王子ファイサルが、
イギリスのアレンビー将軍の
あてこすりに憮然と言い返した、
それは見事なもの。


「あなたは単なる将軍。私は国王になる身だ」


船は、羅針盤を求めるものではない。
手段と目的を履き違えた、
そんな幽霊船など、沈めるの一択。

母胎から羅針盤を抱えているのか、
確固たる地位に生まれ育つとは。
守るべきものを堂々と担う王子には、
沙漠の蜃気楼など瞑目すれば
「なかったこと」で終わるのです。


それでも、イギリスが残した禍根。
狼煙はいまも、燃えくすぶったまま。

青い目、金髪、白い肌、
fairの呪いにかかったまま。