奈良大学通信まよい鹿

奈良大学通信教育部に入学しました

古代飛鳥の色が目に染みる ~明日香村 水谷草木染~

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台風一過、明日香村立部、
橘寺と稲淵宮跡のあいだほど、
古代の技法での草木染を体験できる
水谷草木染さんへ行きました。

私は染色に興味あれども、
さいころ鳳仙花で爪を染めた程度、
本格的な染色はこれが初めて。
わくわくどきどきでした。


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10時の予約時間にまだ余裕あり、
最寄の定林寺跡へ。
ここは聖徳太子建立七ヶ寺のひとつ。
東漢氏系の平田氏の氏寺、立部寺とも。
蘇我氏と結びつきの強い渡来人の
寺院跡であることは確かでしょう。


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基壇でしょうか。
陽の光がスポットライトのようで、
見晴らしも良く、
この地域を俯瞰するに相応の地形です。
抜け目ない、さすが蘇我氏の眷属の寺。


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ぽつんと、石造物。
立部の立石。
聖徳太子の馬繋ぎの石とか。
太子は馬と切り離せない方です。

塔跡の礎心から発掘された
菩薩塑像の頭部はかけらですが
趣深く美しく、
白鳳時代の息吹そのものです。
奈良博に保管所蔵されています。

なぜ菩薩の御顔の「部分」が
鎮壇具として納められたのか?
そもそもそれは鎮壇具だったのか?
いくらでも謎は湧き上がります。

定林寺跡、
明るくて寂しい、
たいへん私好みの空間でした。


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さて、少し早いけど、時間です。
水谷草木染さんの軒先まで
戻ってきました。
すてきな前栽が
行く手を確かに拓けてくれています。


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古民家の壁一面、見本の作品。
媒染を使用しない古代の技法に
なるべく忠実にされているので、
やさしい色合いです。


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水谷道子先生の解説では、
古代、染料より布のほうが貴重で、
色褪せた布は何度も染め直すため、
誰にでも踏襲できる古典柄が
編み出されたそうです。
北条氏の三つ鱗は闘志を燃やす際に、
亀甲は婚礼出産など慶事の風呂敷に、
生活に根差した伝統柄です。


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私と主人、どうでもいい構図。

今日用いる染料は8色。
茜=赤。
赤米=小豆色。
枇杷=ピンク色。
梔子=山吹色。
玉葱=黄色。
背高泡立草=黄緑。
栗=茶色。
李(すもも)=紫。

やはり茜は圧倒される色です。
古代、高貴な人しか
染めものを許されなかったそう。

李の紫も目に染みる美しさで、
古代からの風が吹き継がれる
飛鳥では、色も濃いものが
私の意識に留まります。

古代人が派手な色を好んだことは、
現地に来れば納得できます。
自然あふれる飛鳥の風景には
人目を奪う茜や紫が
何もおかしなものではないのです。
むしろ、自然を崇める姿なのです。


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裏庭では
染料の草木が煮出されています。

ここにいたるまで、
バンダナにするかストールにするか、
どの模様にするか、
サイズと技法を選びます。

布を折り、割箸で挟み、
輪ゴムでキリキリ縛り、
私はかなり手間のかかる模様を
選んだため、
顳顬の血管をピクつかせ、
目も血眼で作業にふけりました。


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水谷先生も
「お花の数、減らす?」
と進言してくださいましたが、
私は一度すると決めたことを
自分の怠惰で頓挫させるのは
絶対にイヤなので、
「あきらめたくないんです」
と断言しました。

「ママ、がんばれ。おら待っとくから」
息子はさっさと竹模様に布を折り、
これまたさっさと染色に入りました。
主人は、私と同じような折り模様で、
「1個折るだけでも大変やのに、
ママはやっぱり根性ある」
と珍しく褒めてくれました。


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茜と梔子。
茜は大人気でした。


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李と栗。
李の紫は褪色します。
「色が褪せたらまた来てね、
染め直すから」と水谷先生。
やったー、また草木染ができる!


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できました!
真ん中のお花が5個のストール、
私の作です。
私の右が主人作のバンダナ。
私の左が息子作のバンダナ。

もう想像以上の仕上がり、
感激しました。

汗をかきかき、
熱い鍋で染料を布にひたし、
何度も色を載せて水で洗い、
布の折り目をひらいたときの高揚、
一期一会の模様と色彩、
自然が私に贈ってくれた命です。

すんばらしい、感動しちゃった。


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水谷先生、
おやつをご馳走してくださいました。
おはぎとあすかルビーのゼリー。
おはぎ、甘くなくてすごく美味しい。
あすかルビーは明日香村名産の苺。
おー、まさに茜色やんか。

「ママさん、よくがんばったね。
ほんとうに手作り感満載の作品やね」
「先生、ありがとうございました。
また来ます。すごく楽しかった」

私は慾どしいので
手間のかかる模様を選びましたが、
なにしろ時間がかかりますので、
予定の2時間以内で終えたい方は
私の花数はお薦めしません。
でも、お花模様、綺麗です。

夏は藍染もされるとのこと。
夏まで待てない。
近いうちに再訪しようと思います。
染色、いいなあ、趣味にしようかな。


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水谷先生が撮ってくださいました。
「ちょっとぼやけたわ、ごめんね」
いいです、バッチオーライです。


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最寄の明日香村健康福祉センター
「たちばな」で遅い昼食と
お風呂に入って帰路につきました。
お風呂は太子の湯といいますが、
温泉ではありません。
村民の銭湯、そんな感じ。
ごはんは、安くてとても美味しいです。

このあたり、石舞台や岡寺など
混雑しそうな名所ではないので、
染み入るように静かな光景でした。

この小高い緑の向こう、
天武と持統の眠る丘が。

なんでもない風景なのに、
飛鳥は別格です。


mizutanikusaki.blog.fc2.com
追記:
水谷草木染さんのブログに
私たち家族の作品がアップされています。
古代が息衝く明日香村で草木染、
一生の想い出になります。

茜の色は迸る血の色、
万葉人の熱い血の色、
是非ともその目に直に
焼き付けていただきたいです。