このoutbreak(……pandemic?)で
奈良公園の観光客ががた減りして、
昨年度の10分の1に落ち込んでいるとか。
奈良大学通信在籍の皆様が
スクーリング等で来寧されることも
奈良にとってはもちろん益であり、
それもこれも絶たれては。
いや、これは汎世界的不況であって、
奈良だけの問題ではないのですが。
で、いまさら、ならまち、です。
奈良県民として、奈良観光に幾許かの
益を落としに行ってきました。
桶? そう、湯桶です。
お湯にぷかぷか浮かんでいるのは
蛸ではなく、布巾包みのお茶の葉。
そして、お湯に沈むは
足つぼ刺激の丸石。
手ではありません、足です。
お見苦しくも私の足、
鰭みたいな趾、生まれつきです。
すみません、半魚人みたいで。
瓊花さん、いったいどこで何を?
なんのことはないです、
このとおり、足湯に浸かっております。
……ならまちで?
そう、ならまちで。
ここは奈良市元興寺町の
『足湯カフェ 茶の湯』。
ごはんやコーヒーを飲食しながら
吉野杉の桶で足湯を楽しめるのです。
元興寺町、とはいえども、
元興寺本堂からは離れています。
このカフェ、小塔跡に近いかな。
私たち親子3人も、
ふらふらならまちをさまよって
不意にここへ辿り着けたのです。
今風のカフェと、
少し色褪せたようなカフェなら、
後者を採るのが私たちです。
食事も喫茶も
落ち着いて味わいたいので。
午後1時過ぎ。
昼食の繁忙期が過ぎていたのでしょう。
私たちだけがお客でした。
ご亭主、とても良いお人柄。
丁寧で親切で誠実。
最初は足湯も息子だけに注文しましたが、
あまりにもご亭主の接客の姿勢が
すばらしくて、私も主人も足湯を追加。
お香かな、神経に障らない
とても良い香りが外まで漂っていて、
ふらりと中へ入って、大正解。
玄米ランチ。1,200円。
これがもう、おいしくって!
メインの鶏の煮込み、炒り玉子、
伽羅蕗、風呂吹き大根、酢の物、
豆腐、菜の花和え、茄子の鍋しぎ、
お味噌汁、玄米ごはん、お茶まで、
ぜんぶ一味何か工夫がされていて、
見た目を数段上回る豪華なおばんざい!
無口な主人が
「これは値段以上の価値ある」と。
「来て良かった」と。
へえ、おべっかは絶対言わない
おたくがそこまで褒めるなんて。
デザートのヨーグルトもおそらく自家製。
ご亭主は独学でこんなに上品で豊かな
味付けを習得されたそうです。
とっても謙虚なご亭主。
以前のお住まいが、
なんと我々の現住所の隣町!
話がとても弾みました。
本日のランチの看板。
我々がお昼のお客の最後でした。
足湯、とっても気持ち良かった。
全身がぽかぽか温まりました。
ならまち散策に疲れたときなど、
ほっと一休みにもってこい。
いいお店、見つけました。
お店の隣は白山神社。
神社の境内には奈良市の保存樹の大銀杏。
実はならないそうですが、
樹齢100年の大木で、金色に葉が色づく
秋の光景は盛観だそうです。
「また来ます」
と主人がご亭主に告げました。
主人、こんなこと滅多に口にしないので、
よっぽど居心地が良かったのでしょう。
おしゃべりな私がつべこべ述べるより、
説得力があります。
「次は、『お帰りなさい』って、
お声かけますね」とご亭主が主人へ。
重ねて言います。
茶の湯、とても良いお店です。
猫がころころ転がるならまち。
いたるところで猫をみかけます。
これがまた人馴れした町猫ばかり。
奈良町資料館。
ちょっと、いまさら。
息子は釘付け。
しかし改めて見ると、
ここの巨大さるぼぼ、kitschですねえ。
あれ、ここは初めて。
『ならまち にぎわいの家』。
2015年にオープンしたそう。
へえ、知らんかった。
うなぎの寝床、奥へ奥へ続く
典型的な表屋造です。
中庭の前栽が和みます。
植物も、家屋も、
人が手入れをすればするだけ
ちゃんと応えてくれます。
屋根に猫ちゃん。
落ちないもんだね。
ここは『ならまち工房』。
ちいさなお店が集まる複合施設。
屋根だけじゃなく、
お店の中にも看板猫がいました。
君、よくよく見ると、
ふくふく肥えて。
それでも屋根から落ちない。
猫や犬が大切にされているのは、
ほんとうにうれしい。
動物が豊かに暮らせる町は、
人間も豊かに暮らせる町なので。
ならまち。
幼いころから通ってきた町で、
しかも、
なんだかすっかり気軽な観光地に
変わってしまって、
わざわざ目当てに向かうことも
久しくなかったのですが、
来てみて良かった。
大阪や京都の繁華街に似てきて、
お店があぶくのように現れては消え、
それでも残るお店は新旧問わず、残る。
生き残ったお店は、
ならまちの風景に溶けるがままの
自然体です。
私も自然に刃向かうことなく、
その化身、龍の背に飛び乗って、
ふわふわ漂ってみようと思います。